『ずっと好きだった』by 柚木N’

ずっと好きだった雑誌連載の誌面で本作の2話だったか3話だったかをたまたま見まして、「こッ、これは!」ってんでバックナンバーから追いかけた作品。

ところが作者様が一般誌連載も数多く抱える売れっ子様なもので、4話以降2年近く続きが出なかったんですよね。
その間僕は首を長~~~くして「ずっと待っていた」ワケでして。

ようやく一般紙の方の連載に一区切り付いたところで本作の5話が出た時にはもう狂喜乱舞しましたよ。
そんでもってその中身を見てみると…

「画力、また上がってる!」

ずっと好きだったもともとエロさには定評のある漫画家さんですが、4話までと5話以降を比べると、肉感とかデッサンが一層なまめかしくなってる印象を受けました。
柚木先生の単行本購入は『アナザーワールド』以降2冊目だったんですが、改めて見比べてみると画力の躍進ぶりが光ってます。
僕的にはもう絵だけで大盛りお代わりイケるレベル。いや~お待ちしていた甲斐がありました!


ヒロイン白羽雪菜は第1話では黒髪ロングヘア。柚木作品にはお馴染みって印象も受ける同級生キャラですね。
ところがNTR作品でありながら物語初っ端の卒業式当日、主役の明石銀太に告られて、
「アタシも…銀ちゃんのこと」「ずっと…好きだったんだよ…」
…と、いきなり無事めでたく結ばれてしまいます。(゚◇、゚)アレ?

いやいや、御心配には及びませんよお殿様方。
お初セックス後のこの甘い甘い(筈の)告白をする雪菜の表情が何とも意味深でございましてね、NTR者でしたらこの顔見た瞬間ビビッと(上下両方の)アンテナ立つんじゃないかなと。

で、2話に入ると一転物語は過去に戻って、まだショートヘアでボーイッシュな、銀太に言わせれば「色気が無え」「男友達みたいな」幼馴染付き合いの高校生雪菜(当然処女)が現れます。
つまりこのお話は第1話の卒業時を起点として、こうして既に出来上がってしまっている過去を振り返る形で進んでいく訳です。

そしてこのおぼこい雪菜が実に可憐でカワイイ(・∀・)!!
ホントはベタ惚れの銀ちゃんへの気持ちを押し隠して、彼の「親友」のポジションを一生懸命守ってるんですな。

そしてそういう彼女の想いに付け入るように、ハイ出て参りました皆様お待ちかねのNTRクソ教師黒木。
コイツが寝取り男としては案外見かけないタイプで、NTR教師の定番というと脳筋マッチョとか、『夏期講習』シリーズの児島みたいなイカにも押しの強そうなアブラギッシュなタイプ、もしくは一転インテリ風のスカした二の線のヤツが多い気がするんですが、
この黒木はどのタイプともちょっと違っていて、水泳部の顧問とは言うものの一見性欲全開のマッチョでもなく、痩せ型体形でありながら顔は大してハンサムでもない。
顔への陰影の付け方見てても、作者は敢えて意図してこういうデザインにされたんじゃないかという気がしたんですが、とにかく人物像が茫洋としていて捉えどころがなく、頭ン中何考えてんのか分からん不気味さを漂わせていて。
まぁありていに言えば「キモい」系なんですが、いわゆるブサメンキモメンのステレオタイプに納まる人物像でなく、妙にリアルな生々しさと、それでいて黒魔術的気色悪さを湛えた爬虫類サイコ。

そのトカゲ男に些細なネタで脅迫され、でも銀ちゃんへの想いの故にそれを拒むことのできない雪菜(←個人的には、ココ、ちょっとお話に無理がある気がしました。コレについては後述)は、ヌロヌロ~ッと、ネチョネチョ~ッと、実にねちっこくやらしくカラダをいじくりまわされた挙句にパックリ処女をイカれてしまう訳であります。
いやもう、この雪菜の女子更衣室での破瓜シーンがとにかく出色の出来栄えで、もうココだけで私何杯ごはんお代わりしたことやら…。

それをきっかけに、哀れ純情ボーイッシュ美少女はどんどんオンナの快楽をカラダに刻み込まれてしまう…のは最早言うまでもございますまいd(^_^)
いやしかしこのトカゲによる雪菜への調教がまたよろしくってですね奥様、コレはやっぱ女性作家ならではなんでしょうかね、女体の快い所に手指の届く細やかな念の入ったイジクリテクで、体はもうすっかり成長してたけど精神的には初心で、自分を「アタシのことをイヤラシイ目で見てる男性がいるなんて」「想像もしてなかった…」雪菜が、あれよあれよという間に「溺れて」「引き摺られて」しまう様が実に説得力あるエロ絵で展開されて参ります。
この黒木の堕としテクはセックスの時だけでなく、女のコ扱いされた事のない雪菜の女性としてのプライドをくすぐって揺さぶりをかけたり、さりげない小道具で哀れな男ヤモメっぷりを晒して母性本能を刺激してみたり。巷に溢れてる「マジカルチンポ突っ込んだら即席アヘ堕ちしました」みたいなのとは一線を画してまして。こういうのホント、いや、勉強になりますありがとう黒木先生…じゃなかった柚木先生!

更にそこに不幸な偶然も重なって、銀ちゃんへの想いを自ら諦める決心をしちゃった雪菜はどんどん黒木に絆され、ヤローの色に染められて誰もが「付き合いたい」と憧れるロングヘア美少女へと変貌を遂げる。
その彼女の「女」への変身がどこから生まれているのかも知らない銀太の、級友への余裕をぶっこいた「お前にはやらんぞ」というニヘラ顔が何とNTR魂をくすぐることでありましょうや!

そして遂に雪菜は、自分を脅し犯した黒木に向かって
「もし…赤ちゃんできたら…」
と決定的な言葉を口にし、そして黒木もその雪菜のオファーをいともあっさりと受け入れてしまうんですわ!
僕にはコレがかなりショックだったんですわ!あの何考えてるか分からんブキミ君がね、まさか雪菜にこういう態度示すとは思ってなかったの。コレね、単にオモチャにしてポイ捨てにされるより、この物語の場合コッチの方がずっと破壊力デカいダメージポイント受けたであります!
エンディングシーン、「銀太君ならきっとうまくいくよ」と励ます二人の共通の友人桃萌ちゃんの言葉に続いて、トイレの中で”ある事実”を認識してニコリとほほ笑む雪菜の表情があまりにも切なくて、殊更エロいシーンでもないのにワタクシここでもう1杯更にお代わりしてしまいました。

ラストシーン、幼き日の雪菜と銀太が手を繋いで帰っていく後姿の夕焼け場面はもう、胸苦しくて溜まらず第1話に戻って読み直しながらもう何杯目か分からぬお代わりをですね………


で、ここまで押しの要因を書き連ねて参った訳ですが、
最後の最後で、ちょっとだけ作者さまには申し訳ございませんが、ワタクシ、反旗を翻させていただきます。

単行本追加収録となったエピローグ4ページ、
僕は、コレ、無い方が良かったです。

後書き読みますと、読者アンケで「続きが知りたい」とのご意見があったとの由。
それはそうでしょう。あのエンディングであれば、その後の雪菜と銀太と黒木の関係がどのような形で紡がれていくのか、知りたいと思うのは読者としては当然の欲求であろうかと思います。

でもね………でも、敢えてそこは語らずに、読者各人の胸の内での補完に任せるべきじゃなかったのかなぁ、と僕には思えたんですよ。

ネタバレになっちゃうのでぼやかした書き方しますけど、NTR者の趣味嗜好というのは実に千差万別で、ある方向に答えを導いてしまうと、必ずや取りこぼしてしまう対象が生まれます。
あまりに凄惨で救いのない悲劇的な終焉には耐えられない、という人がいる一方で、そうであればこそNTRの切なさは際立つのだ、という人も居る訳で。

以下は徹底して僕個人の趣味嗜好ですが、、、
雪菜には、柚木先生ご自身が後書きで彼女の命名について触れておられるとおりに、銀太にとっては刹那な女性、永遠に「もう二度と取り戻すことのできない失われた過去への想いの中の人」であって欲しい気が致しました。
そうであればこそ、1話から遡って事後譚的に進められた本編の切なさが更に際立つ気がするんですよね。


あと、やはり後書きに記されている、二人の共通の友人、桃萌ちゃんに関する没設定。
僕は是非ともそっちで行ってほしかったなぁ、と思いました。
あのラストの「銀太くんならきっとうまくいくよ」、コマの割り方からして妙に意味深だったのはそういう裏事情があったからなのか~、と。

黒木が雪菜を脅迫してオトすシーンの展開にやや無理があると感じた、と前述した点に被ってくるんですが、
本編通じて見たときに、黒木という男の人物像としては、ああいう強引な手法で脅し犯すより、もっと陰険で卑怯な手段で絡め捕るように雪菜の選択肢を奪っていくようなやり方のほうが似合ってる印象を受けたんですよね。

そのあたり、桃萌ちゃんの裏設定を読んだ時に腑に落ちたというか。

たとえばその桃萌ちゃんの落ち度をネタに黒木が雪菜に脅迫をかけるような展開であれば、銀太に対する想いと桃萌への友情の双方から責め縛られて、黒木の脅しが理不尽で卑劣極まりないと認識しながらも抗えずに体を開くしかなかった雪菜の行動原理にも、一層重厚な説得力が現れたんじゃないかな~…と。
僕の考え過ぎなのかな~、どうにもちょっと理屈っぽ過ぎる性分で。一般的な読者層の意見じゃないのかもですが。


と、少しだけ贅沢な不満も述べてみましたけど、僕的には過去に触れた幼馴染寝取られものとしては、ランキングトップに来るお気に入りの作品でございます。

また一般誌の方の連載でお忙しくなられるみたいですが、柚木先生には是非またヘビーで切ないNTR作品を作って頂きたいなと切にお願いしつつ、お茶碗と箸を置きます。
どうもごちそうさまでしたm(_人_)m