『私はこれからも、きっとあなたが好き。』by くにふとわーく

塗りが今回からシンプルなアニメ塗り寄りにシフトしましたね。
個人的には今までのくにふとわーくさんの、果物の艶めきのような肌の陰影が大好きだったのですが、おそらくあの塗りにはとてもコストがかかるだろうと思いますので、制作期間や表現手法の模索等々秤に掛けられた上でのご判断だったのかなと。

くにふとわーくさんは以前『彼女が“情事”にハマる“事情”』の感想を書かせて頂いた時にも、作り手がキャラに対して生身の人に対するように丁寧にお付き合いされているな~、という印象を受けていました。
創作だから妄想だから何でもアリとばかりにエロのインフレを極限まで突き詰めるのではなく、現実的なモラルの境界ギリギリのところで揺らいでた登場人物が足を踏み外してしまう、その瞬間にジュワッと滲み出るエロさ、みたいな。

本作も新婚家庭の日常生活を舞台にして描かれている作品で、こういう事ってウチの隣に住んでる若夫婦とか職場で机を並べてる同僚の帰宅後の家庭生活とか、そういうあちこちで結構実際に起きてる事なんじゃないかなぁ…と思わせられる臨場感があります。
そうした日常系エロスのナマナマしさがお好きな方にお奨め。そう、私だ<( ̄^ ̄)>


主人公の達哉にしても妻の美沙にしても間男の拓哉にしても、絵に描いたようなフィクショナルな善人でもなければ悪人でもなく。
日常に於いてはおおよそ真っ当な価値観や倫理観を持ちつつ、でも決してそれだけでは済ませられないイビツさも心のどこかに抱えていて、時折そういう歪んだ欲望を持て余しそうになる自分を手懐けながら何とかかんとか常識人として暮らしている…つまりは僕らと同じ世界に生きてる、現実的な生活感を持った人たちです。

たとえば自分の奥さんになった女性との初夜で彼女が処女じゃなかった時に、ホンットの本心から何のわだかまりもなくキミの過去ごと愛せますって出来た男ばかりだったら、アタシャそんなツマンナイ世の中でNTRサークルなんてやってられませんやね(^m^)
嫁さんが切なそうな顔して喘ぎながら自分にしがみ付けばしがみ付くほど、コイツは以前俺じゃない男にも股広げてこの顔見せたんだな…と何とも言えない気持ちになる、そんなアナタこそ我が同胞\(^o^)/

そして達哉はその現場記録を自分の目で見ちゃった訳ですから。しかもその嫁の最初の男が、名前やら趣味やら自分と似通った所が多々ある…俺ってひょっとしてアイツのバッタもんかよ…?ってコレでモヤモヤしないような健全なヤツとは僕ァ友達になれません。イイぞ達哉、黒い炎をメラメラと燃やせ\(^o^)/

でもって、その美沙の前の男に実際会ってみたらコイツが自分と気の合うイイ奴だったりして、余計にモヤモヤがはかどってしまう達哉クン。昔の男と痴態を晒す嫁の姿が見たい見たいって歪んだNTR願望が肥大化していく。
でもその片方で、二人にイカニモなシチュエーションをアレコレお膳立てして差し上げつつ、それでも過ちを犯さなかった嫁と男にヨカッタ~と心底安堵し、やっぱりお嫁チャンは絶対他の男にゃ渡さない!と、改めて意を固くする至極市井的でマトモな達哉君リターンズ。子供かw。めでたしめでたし。


…で終わる筈がなかろーてwww

一人で勝手に火を点けて、一人で勝手に消火して、自家発電を完結しちゃってる達哉クンをよそに、
着火された種火は美沙と拓哉の二人の間の焼けボックイに燃え移り徐々に火勢を強めていく。

ここから昼メロ展開w 「だ…だめ………………」→チュー、などとww焦らしまくります。なかなか決定的なコトまで踏み出しません御両人。この勿体付けた小出しが日常系エロスの妙味ですかしら?オホホ
とはいえコチラ18禁アダルトで御座いますから。決定的なコトへは踏み出さなくても、不埒なコトにはアレやコレやと踏み外しつつ、徐々に徐々にその瞬間に向けて熟成して参ります。

エロってゼンマイバネみたいなところがあって、我慢してキリキリ巻けば巻くほど解放した時のエネルギーはデカい。
遂に一線越えた時の美沙の弾けッぷりが、嗚呼キミってホンマはそないにドスケベなコやってんね~ってチンコが震えますやね。
ああいうイタシてる最中のネジのブッ飛び方というのは、男女問わず誰しも多かれ少なかれ身に覚えがあるのでは? 脳内麻薬でラリってるんですかなぁ、一種の変性意識状態。平常モードでは絶対やらかさないようなコトやらかして、後になって後悔するんですよねぇ……(彡 ̄ - ̄)

コトが終わって拓哉を見送った直後の美沙の顔が何とも切なくて……。そしてそれが物語の最後に彼女が達哉に見せる表情にも重なる余韻。よろしおすなぁあのラスト数枚、美沙の表情がじわっと変化していくところ。物語冒頭で初登場した時と同じ構図で、最初は屈託ない無邪気な笑顔だったのが、色んな思いが凝縮した上での万感籠った泣き笑いに変わってる。

美沙が最終的にどっちの男を選ぶか、というのは、どっちであっても物語としては成立したんだろうと思います。
(さしずめゲームだったらマルチエンドで両方用意したりも出来るのでしょうが、そういう受け手へのお任せ感、僕個人的にはあんまり好きじゃなくて)
そしてくにふとさんが選んだエンドがコッチだったっていうところにも、やっぱり作中人物に対して丁寧に向き合う作者さんなんだなぁ、という読後感を覚えた次第です。


ただし今作には、お話の展開がちょっと僕の想像力では埋めきれないところもありましたので、それも正直に書いておきます。

まず事の発端となったブツ。
アレって美沙にとっては初めての男との相当強烈な想い出の一品であり、やらかしちゃった黒歴史の象徴でもありませんかね。彼女はちょっと天然なところもあるキャラですが、でもそういう品をここまでうっかりぞんざいに扱うコなのかな〜という違和感はありました。

また達哉に関しては、嫁の昔の男を自宅に引っ張り込むという荒技は、最初は黒い動機が下腹のあたりに溜まってたから理解出来るとして、じゃあ「誰にも君を渡さない」て思い直したその後も何故みすみす二人にチャンスを与えるようなポカを重ね続けたのか? 或いはあんな事誓いながらも、やっぱりその下腹の欲に思考を支配され続けてたのだろうか。あの夜彼は本当に「ぐっすり眠ってた」のだろうか?
テーマパークでの「達哉」「タッくん」の呼び方に関する掛け合いから、彼がこの時点でおそらくあの夜を知っているというのは推察出来ますが、あの日からこの某日までの二人の間のやりとりに、達哉に対するこの疑念への答えもあったのかなかったのか。そこを敢えて描かなかったのは、それはこういうモヤッとした読後感として読み手側が各人の中で抱えておいてください…っていうくにふとさんの意図だったのでしょうか。

あと拓哉だけは主観シーンがないので、それぞれの場面での彼の心中は行動と発言から察するしかありませんが、もし現実の知人として彼が僕の目の前にいたら、やっぱりオマエのやった事はクソ野郎としか言いようないなぁとは思います。
ヤルことヤリ散らかした後になって良い人ぶった幕引き図ってるだらしなさまで含めて一層イヤラシイ男って糾弾も出来なくはない訳で、余計にネトラレ魂をイライラと刺激されてしまった。まぁだからこそ彼は夫婦のオカズとして「これからも、きっと」永久にあり続ける…のだと考えれば、ヒネリを更に一回転加えた高等テクな寝取り男像とも言えましょうか。

しかしま、ネットだろがテレビだろがフリンだのリコンだの毎日のように飛び交ってる巷の折々、現実は小説よりも奇なりって言いますし、このくらいの不条理を平気で抱え込んであれこれと間違い犯し続けてるのが僕らの日常世界のリアリティかもしれないですね〜。
世にNTRの種は尽きまじ。